人間ではありませんが、ハエの研究を通した興味深い記事が朝日新聞のウェブサイトに掲載されました。
日の当たらない特殊な環境で飼育し続けた結果、ハエの求愛行動に大きな変化が現れたというのです。
暗闇で56年、1300世代経たハエの求愛行動に変化
先日、本人が乗り気ではないのに親や周りのプレッシャーから婚活せざるを得ない環境におかれ、うつになるという可能性について紹介しましたが、このような典型的な症例を解決するには、「親の世代と今の婚活は違う」ということを親子共に理解する必要があるのだそうです。
人間よりも世代交代の早いハエの研究、環境が変われば婚活も変わるという、よい例え話になるかもしれません。
この暗闇で飼育するハエの研究は、京都大学の理学部が行っているもので、研究の期間は現在まで実に56年間に及び、研究対象のハエは1300世代にも渡るそうです。
研究の目的は、環境の変化で何らかの進化がもたらされるか、という観察にあります。そして、今回は、求愛行動に顕著な変化が現れたそうです。
ハエは見た目に変化も無く、光を感じる能力も失っていなかったそうですが、「感覚毛」と呼ばれる体毛が1割長くなっており、触覚が発達しているようです。
そして、肝心の求愛行動。通常、研究に使われているショウジョウバエは、メスのフェロモンを感じ取ったオスが、羽を振るわせて求愛ソングを歌うところから始まります。
メスが1度ですんなりとオスを受け入れることは稀で、何度も拒否されながらチャレンジし続け、最後まで粘ったオスが、父親になる権利を得られるというわけです。
このオスが粘る時間というのが、通常では20分を超えるそうです。ただし、暗闇で生活し続けてきた研究のハエたちは、わずか3分ほど。
この変化の原因は、今のところ全くの謎ということですが、変化が起こっているのは確かと言えるでしょう。
56年間、環境が変われば、これだけ男女の駆け引きに変化がある、という野生の本質が、この研究から垣間見られるのではないでしょうか?